「外部人材活用による経営課題解決セミナー」イベント開催レポート
令和6年9月26日に「外部人材活用による経営課題解決セミナー」を開催しました。
高知県内事業者の皆様に、副業・兼業プロ人材活用への理解を深めて頂くため、県内での活用事例をトークセッション形式でお届けした本セミナー。登壇者の皆様からは、副業人材活用に至った経緯から人材選考のポイント、コミュニケーションの取り方、具体的な支援内容など、現場目線での貴重なお話を伺うことができました。
開会挨拶/高知県の副業人材活用促進の取り組みについてご紹介
高知県UIターンサポートセンター 片岡理事長 運営事務局 近藤
はじめに、本事業主体である高知県UIターンサポートセンターの片岡理事長より開会の挨拶、運営事務局の近藤より高知県の副業人材活用促進の取り組みについてご説明を行いました。
昨今、地方の企業では、人口減少・少子高齢化などの社会環境の変化に伴い、様々な経営課題が顕在化する中、県内の需要や労働力に依存したビジネスモデルからの脱却が求められています。
その一方で、都市圏の大手企業を中心に副業・兼業が解禁されたことをきっかけに、ハイスキル人材の方々が本業の域を超えて自身のスキルを地方企業の支援に活かそうとする動きが強まってきており、副業・兼業プロ人材の活用が新たな地方の中小企業の経営施策として注目されつつあります。
高知県でも、高知県UIターンサポートセンターが主体となり、県内事業者様の副業・兼業プロ人材活用を支援しています。外部人材の活用に対して、労力やコスト面においてハードルが高いイメージをお持ちの方も多いと思いますが、本事業では求人掲載から人材選考まで一貫したサポートを行っており、このセミナーをきっかけとして積極的に活用を検討していただきたい、との説明がありました。
続いて昨年度、副業・兼業プロ人材を活用された県内事業者様と、マッチングされたプロ人材の方々にご登壇頂き、事業課題や実際の支援内容についてお話しいただきました。
トークセッション① 土佐和紙 井上手漉き工房
/体験イベントとSNS広報を連動させ県外需要を開拓
土佐和紙 井上手漉き工房 井上みどりさん
土佐和紙 井上手漉き工房は、明治時代から続く土佐和紙工房で、代表の井上みどりさんは4代目として土佐手漉き和紙の生産・販売、及びPR活動に取り組まれています。
元々、井上手漉き工房のお客様は先代からの付き合いの方が多く、代替わりをきっかけとして顧客離れに直面した井上さん。次世代へ和紙の魅力を訴求させるため、県外での和紙体験イベント「土佐和紙キャラバン」の開催計画を立てました。
しかし、イベントのコンセプト設計や効果的な広報活動についての知見が不足していたため、イベント運営やマーケティングの知見を持つ副業・兼業プロ人材からのアドバイスを求めることにしました。
杉山博康さん
本事業で伴走人材としてマッチングされたのはソニー株式会社(現ソニーグループ株式会社)でグローバルマーケティングの責任者や海外法人の社長などを歴任されてきた杉山さんでした。
杉山さんからは、イベントが事業活動にどう位置づけられるか、利益を生み出す持続可能な仕組みをどう作るのか、といった指摘を受け、ただイベントの開催を目指すのではなく、土佐和紙の伝統技術継承や需要拡大という、より大きな構想を実現するための戦略立てが必要であることに気づかされたそうです。
杉山さんからのアドバイスを受け、イベント当日は体験コーナーだけでなく、作家さんと連携して土佐和紙を使った作品の展示販売を実施。和紙そのものに加え、和紙からできた作品を展示することで、一般の方に手に取ってもらいやすくなりました。また、作家さんにとってもお客様との繋がりの場となり、作家さんや来場者がSNSで積極的に発信を行ってくれた結果、土佐和紙の魅力がより広範囲にプロモーションされるという良い循環が生まれたと言います。
取り組みが功を奏し、現在では新規顧客の獲得やイベントに対する様々な形での協力、支援にも繋がってきているそうで、今後は、最近増え始めたインバウンド需要の拡大や工房自体の魅力発信にも取り組んでいく予定とのことでした。
最後に、副業・兼業プロ人材の活用を検討中の方へ向けたメッセージとして「求人を出したことで、地域に還元したいと思っている副業人材の皆さんに、自分たちの活動を知っていただく機会が生まれました。選考過程から色々と助言をいただく中で、自分の中で見えていなかったものが見えてきます。まずは、自社の活動を知ってもらう場として、このマッチング支援事業を活用していただきたいです。」とお話いただきました。
トークセッション② 有限会社高知アイス
/営業活動の見える化による業務効率改善と意識改革を実現
有限会社高知アイス 浜町光次郎さん
浜町光次郎さんは高知県の一次産品を使用したアイスクリームの製造を行う有限会社高知アイスの代表取締役社長です。高知アイスは生産者や地域への貢献の想いも込め「Made in 土佐」をコンセプトとして商品づくりに励んでいます。
想いのこもったアイスをより多くの方に食べていただきたいと考えた同社は、県外での販路拡大・認知形成の知見をもつ副業・兼業プロ人材の支援を求めることにしました。
選考の結果、3名の方との契約が決まり、販路拡大に向けて国内営業、海外営業における支援をそれぞれ1名ずつに役割を分けて依頼するとともに、今年1月に急逝した先代から高知アイスの経営を引き継がれた浜町さんの経営面での支援を砂川さんが請け負うこととなりました。
複数名の伴走支援によって各領域でより専門的な支援を受けられる一方で、3名それぞれと相談・確認を行う必要があり、時間の捻出に苦労したという浜町さん。一定期間の伴走支援を経て、現在では砂川さんとのみ契約を継続し、営業面含め全面的な支援をいただいているそうです。
砂川大輔さん
砂川さんは現在、富士通株式会社CEO室にてエグゼクティブサポートを担当されながら、個人の副業として様々な中小企業の経営計画の策定や広報マーケティング施策に関するサポートなどを行われています。
高知アイスの伴走支援においては、これまでの170社以上の支援経験を踏まえ、現場の情報が経営者に明確に伝わらないことが事業の失敗の大きな要因となり得ること、そしてその危険が高まるのが代替わりのタイミングであると考え、大手企業の成功事例と比較しつつ現状の精査を行い、高知アイスにとって最適な形での情報連携体制の提案を行いました。
具体的に実現した施策として「営業活動の見える化シート」があります。高知アイスでは、現場と経営層の縦の連携だけでなく、営業担当者同士の横の連携にも課題があり、複数の営業担当者が同じ日に同じ地域に配達・出張へ向かうなど非効率的な営業活動が行われていました。各営業担当者の翌日の予定を整理・見える化し、情報をチームで共有することで、効率・連携を意識した営業活動ができるようになってきたそうです。
また、見える化による効率改善だけでなく、営業会議の頻度を増やしてタスクの進捗確認や課題の整理をこまめに行い、営業先の精査、営業担当者の裁量権の見直しなどスピード感を意識した営業活動に取り組んでおり、その成果として大口顧客の獲得にも繋がっているとのことでした。
最後に
最後に、井上さんと浜町さんとで、副業・兼業プロ人材を受け入れる県内企業側の心得について話し合ってもらいました。お二人とも「提案を素直に聞き、すぐに行動する」ことが意識改革や実際の成果に繋がっているとのこと。副業・兼業プロ人材にとっても事業者様のやる気を感じられ、より積極的な提案へと繋がる可能性が高まります。セミナーを通して企業側のスタンスの重要性を感じていただいた参加者様も多くいらっしゃいました。
また、企業によって課題は様々で、何かを変えなければならないはずだが、副業・兼業プロ人材に何を依頼するべきかがわからない、といった事業者様も少なからずいらっしゃいます。課題の整理や依頼内容のご提案など事務局スタッフがサポートさせていただきますので、少しでもご興味があれば、まずは、ぜひご相談ください。
副業・兼業プロ人材活用が、課題解決・事業成長の一つの手段となれば幸いです。